ハモンド・スズキの日々是、口風琴 -きままにメロディオン-

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第19回「バラよか・・・?」
2008年11月25日(火)
date 11月22日(土)/ place ピア・ジュリアン
musicians 向井航(CELLO) 石坂慶彦(PIANO/HAMMOND 44)

 今回紹介するのは作曲家でピアニストの石坂慶彦さん。東京藝術大学音楽部作曲科をご卒業という由緒正しい経歴を持たれ、ロン毛で茶髪でヘビーメタルという風貌で異彩を放つアーティストです。彼との最初の出会いは昨年の暮れ、「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏する某オーケストラでのことだった。楽器フェスティバルに出展したプロトタイプの「STAGE-44」をモニターさせて欲しい。という単刀直入のオファーからだった。初対面のときこそ彼のいでたちには面食らったが、芯の通った人柄とメロディオンに対する思い入れにすっかり魅せられてしまったのだ。


 彼のこだわりは楽器にも現れていた。初めて見せられたPRO-37v2は共鳴箱にピックアップを貼ったエレアコタイプのもの。オマケにグースネックのマウスピースにストラップ使用であった。HAMMOND 44のコンセプトそのものだったのである。目を見張ったのはサイドカバーが豹柄だったこと。細部にまで細工が施されている。今回、製品と並べてみると改めて感心させられた。
 「ゴムの振動で音を拾っていたのですね。自分のは中域あたりにピックアップを張っていたんスけど。」 と、構造のチェックも終わっていて、エフェクターについても程よいチューニングを詰めているようであった。中でも、マイクの特性を補うためにブーストをかけているところと、チューブアンプでサウンドを整えている点については恐れ入ったものである。


 石坂さんのこだわりはこれだけでは終わらない。PRO-37v2に取り付けたラインジャックもストラトのパーツを使用されている。「ここは鉄板をバリバリ切って穴を開けましたよ。」と、裏面を見せられる。手の込んだ仕上げは、とても作曲家の領域ではない。S-32にいたってはモスグリーンにペイントが施されている。塗装の技も素人ではない。「これはちょっと軽い音がすると思うんだけど、音の抜けが気に入っているんです。」と、鋭く息を吹き込んでリードを鳴らす。甲高い金属音が突き抜ける。
 「トイ楽器としてはピアニカだけど、楽器群としてはメロディオンですよ。だから自分はスズキの製品を使用しているんです。だけど、このHAMMONDロゴはズルイっすね。かっこよすぎます。反則ですよ。」と、笑われる。


 今回の共演はチェリストの向井航さん、関西フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者である。この二人がどのような音楽を奏でるのかというと、「バラード」である。バイオリンのように高速パッセージを得意とするのでもなく、コントラバスのようにピッキングで動き回ることも少ないチェロという楽器がその魅力を発揮する音楽、「バラードばかりでもよかですか。」が今回のタイトルの『バラよか』である。
 とは言え、石坂さんが作曲されたTBS水曜ノンフィクションのテーマ「THE BASE」では見事なランニングベースを演じられた向井さん。松脂のついた弦を爪弾くためマメをつぶしての熱演である。小気味良いホウイングで演じられた「ペーハー ムーン」、しっとりと歌い上げる「オーバー・ザ・レインボー」、どれをとっても豊かな響きで楽器が鳴っている。


 HAMMOND 44が登場したのはラストの「リベルタンゴ」でのこと。この1曲のためにエフェクターの調整に余念がなかった石坂さん。オクターバーを加えてバンドネオンのサウンドを作っている。ブレスでの抑揚がとても情熱的に彩を加え、ラテンカラー一色に染め上げていく。最後のコードはダブルタンギングで細やかな泡のようにカデンツァは消えていく。そして、ピアノのフィルイン。疾走感のあるテンポで駆け抜けていく。チェロの主題が休符を喰って飛び込んでくる。
 演奏後二人に声をかけると、「せっかく来ていただいたのに見せ場が少なくて申し訳ないです。」と、気遣われる向井さんに対して、「いや、ダラダラやり続けるよりも、バッチリ決めたほうが印象的なんだよ。」と言い切る。完全にプロデューサー目線である。そして、「この楽器が本領を発揮するのはこれからですよ。まだまだ、可能性を秘めている。とにかくロングトーンができることはキーボードとして一番の武器なんですよ。」と、付け加えられた。


第18回「USAでもHAMMOND 44」
     
メデスキ・マーティン・アンド・ウッド
2008年11月21日(金)
date 10月31日(金)/ place 恵比寿ガーデンホール
musicians ジョン・メデスキ(keyboards) ビリー・マーチン(drums) クリス・ウッド(guitar)

 「20th J-WAVE ウェア・イズ・ザ・ミュージック? 2008」 に出演したメデスキ・マーチン・アンド・ウッド。彼らの音楽は先進的でヒップな雰囲気で踊ることができ、現在全米を最も熱くしているジャム・バンドである。そして、あらゆるキーボードを弾きこなすジョン・メデスキが今ハマっているのはHAMMOND 44なのである。


 前回、ジョン・スコフィールドとの共演ではPRO-37v2を使用していたジョンだか、今年のウィンター・ナムに出展したSTAGE-44に魅せられエレアコの虜となっていた。いち早くプロトタイプを手にしたジョンはサウンドメイクに着手したのだった。ディストーションで歪ませてフェンダーのデラックスリバーブで鳴らす。彼が作り上げたサウンドは低域が3倍くらいに膨れ上がり、中高域から音程が聞き取れるほどの重量感を持つ。スピーカーのクリーンな特性がサウンドを整え、伸びを与えている。鍵盤ハーモニカの概念からは創造を絶する音だ。まさに、HAMMOND 44、そのものである。


 いつもながらのことであるが、ジョンはビンテージキーボードの要塞を組み上げている。ハモンドオルガン、クラビネット、ウーリッツァ、ソリーナ、メロトロン、ムーグ、ピアノ、キーボーディスト垂涎の楽器ばかりである。そして、それぞれのキーボードにはアンプが選ばれているのだ。HAMMOND 44もこれらのキーボードと同格の扱いである。トイキーボードのようなエフェクト目的ではなく、ブレスを用いた感情表現のできるキーボードとして選択されているのである。


 また、今回の公演には発売前のハモンドオルガンB-3mk2も使用されていた。彼自身、時折不本意なB-3と出会うこともあり、最新のハモンドオルガンに関心を持っていた。我々もビンテージキーボードの揃ったステージでのテストは願っていたこともあり、今回のモニターにつながったのだ。
 ジョンはビンテージの質感を保ち、オーバードライブやデジタルリバーブなどの新しい機能を持つB-3mk2を気に入られ、新たなサウンドを作り始める。立ち会ったエンジニアは考えられないサウンドを生み出すジョンの隣で、メカニカル・エラーが発生しているのではないか、とハラハラするのであった。


 ショーが始まるとホールはクラブと化す。ハロウィーン当日ということもあり仮装パーティーとしても大いに盛り上がる。フロアはメデスキ・マーチン・アンド・ウッドのインプロビゼーションに酔いしれる。何処へ漂うのかわかる術もなく踊る。様々なサウンドを操るジョンがいよいよHAMMOND 44を奏でる。ブローしたリードサウンドがフロアに広がる。ファンキーなベースラインにのってジョンのメッセージが聞こえてくる。「すべてを忘れて踊れ、今を生きろ。」と言うかのように。
 リハーサルではロンドンのミュージックシーンを熱くしているジェイミー・カラムにHAMMOND 44をレクチャーするジョン。WISM? 2008にはブラジル・パーカッショニストの最高峰シロ・バプティスタが率いるシロ・バプティスタ&バンケット・オブ・ザ・スピリッツも登場。様々な民族楽器を操るバンドであるがキーボードのブライアンは鍵盤堂さんで買ったばかりのAndes25Fを使用する。鍵盤ハーモニカも使用しているということもあり、同店でHAMMOND 44も購入されたそうです。このように、HAMMOND 44による鍵盤ハーモニカの世界制覇はいよいよ本格的に始動、ハモンド・スズキUSAもいよいよ参戦です。


第17回「3分間・三重奏」
     
Melodica Summit in Tokyo
2008年11月20日(木)
date 11月16日(日)/ place  四谷 カノンホール
musicians 野村誠、赤羽美希、正木恵子、渡辺達弘

 「Melodica Summit in Tokyo」題された今回のイベントは、この夏に野村誠さんがドイツで参加した「Melodica Summit」の東京版ということ。「名前を付けた後で何ですが、サミットというのは頂点って意味なんですね。だけど、『自分が頂点だ。』って言いたいのではないですよ。」と、オープニングの挨拶から脱力気味の野村さんですが、「しかし、今僕が使おうとしている鍵盤ハーモニカはこの楽器たちの頂点ともいえるもの。」とHAMMOND 44を紹介。いやいや、お気遣いありがとうございます。


 まずは、野村さんの即興からスタートしたコンサート、44keyと音域が広がったこともあり演奏の幅も広がる。低音域が充実していることが想像以上の効果を出している。野村さんのソロの後は若手鍵ハモプレイヤー・赤羽美希さん、正木恵子さん、渡辺達弘さによる三重奏がおこなわれます。
 この後演奏は本日のメインとなる現代音楽の作曲家たちの作品へと移ります。キーワードは「3分間、三重奏」。3分間というのはもちろん演奏時間のこと、あまりにも長いと練習が大変だからですね。三重奏というのは演奏メンバーを確保しやすいから。演じる側の配慮とも言えますが、聞き手としても3分間というのは集中して聞けるものです。現代音楽というものは常に初演のように新鮮なもの。何度も繰り返して聴くことが少ないこともあり作品の持つ刺激が瞬時に心の張りを揺らしています。それだけに3分間という緊張は心地良いものです。


  また、今回の作品が鍵盤ハーモニカのために作られた作品であることも感銘を受ける。シングルリードの響きを楽音として音楽を造られている。作曲家としては依頼通りの創作をした結果だが、何かの代用音として使用されることの多かった楽器だけに、それだけで音楽が構成されていることが非常に新鮮である。弦楽器や管楽器のアンサンブルと比類する風格を持っている。
 そして、今回参加しているプレイヤーたちの演奏も冴え渡っていた。作曲家、演奏家としての野村誠さんをリスペクトされ、鍵盤ハーモニカという楽器に見せられた若手たち。それぞれの楽曲と正面から向かい合い音を紡ぐ。作品への解釈にブレを感じさせない演奏である。打楽器演奏家の渡邉さんは両手を使ってマリンバのように早いパッセージを打鍵する。他の3名とは異なる奏法であるが、一切の違和感を持つことは無い。完全に同化しているのだ。


  今回演奏された5つの作品は次の通りです。
鶴見幸代 「おほほ」
田中吉史 「うろおぼえの旋律とコラール」
近藤浩平 「ふがいない戦士達」
寺内大輔 「林道」
Soe Tjen Marching 「The Bear’s Company」
 どの作品も個性的で生命の息吹を感じさせてくれるものでした。作曲者の伝えたい主題と演奏者たちの表現が見事なまでに合致した演奏。そして何よりも鍵盤ハーモニカゆえに語りかけられた響き。そこには音楽のジャンルに捉えられない音と時間があるだけだった。


第16回「海外からのお客様
  フェデリコ・ゴンザレス・ペーニャ」
2008年11月17日(月)
 9月17日、突然遊びに来たのはフェデリコ・ゴンザレス・ペーニャだった。彼はスズキハーモニカのエンドーサーのグレゴア・マリとトリオを組んでいるキーボーディストである。今回は3大ベーシストユニット「SMV」(Stanley Clarke, Marcus Miller, Victor Wooten)のキーボーディストとして来日。そして、公演の合間をぬって浜松に立ち寄ったのだった。
 彼の目的はズバリHAMMOND 44。ナムショーに出展した「STAGE44」(当時の名称)をスズキグループの55周年パーティーで演奏されていたのだ。(余談であるがAndes25Fも演奏している。) 彼は久しぶりに対面したHAMMOND 44に一言「Perfect!」 と告げ、フレンドリーな表情から笑いが消えた。獲物を追う隼のような目が光る。そして、「今からレコーディングをする。」 と発したのが次の言葉だった。
 1Take、2Take・・・彼の思うようなサウンドが作れない。苦悩の表情でエンジニアたちも立ち会う。シーケンスと生音とのリハーブが溶け合って聞こえないのだ。急場のことだったのでモニターに返る音のバランスが彼の好みと微妙にずれているのだ。妥協を許さない彼が「OK」を出したのは8回目だった。 プライベート録音のため公開できないのが残念だが、彼の残したリードサウンドは繊細で美しく、情熱的。そこには彼のルーツとなるラテンアメリカの血が脈々と流れているのだった。

 フレンドリーな表情に戻った彼は「本当に良い楽器になったね。ppからffまでのコントロールが満足できる素晴らしいリードだ。来年の全米発売が楽しみだよ。」と言い残して去っていった。そして、今回のレコーディングは素晴らしい楽器を作り上げたエンジニアたちへ贈るものだった。


第15回「楽器フェスティバル2008
     ご来場有難うございます。」
2008年11月13日(木)
「達人、夏秋文彦 の HAMMOND 44デビューライブ」

date 10月25日(水)/ place  池袋サンシャイン
musicians 夏秋文彦(HAMMOND 44・Andes25F)那須野綾(Percussion)

 楽器フェスティバル2008、HAMMONDブースの注目を集めているのはHAMMOND 44。「これが見たくて来たんですよ。」 というお客様の声にスタッフ一同涙ウルウル、この日を迎えられたことに感謝の気持ちが溢れます。
 デビューライブに登場するのはメロディオンの達人・夏秋文彦さん、お相手を努めるのは那須野綾さん。「彼女はあのように見えるけどロックなのですよ。」と夏秋さんは耳打ちするけれど、その容姿からは感じ取れないほどおっとりとしたお人柄。ステージでどのように豹変されるのかとても楽しみです。


 午後におこなわれたHAMMOND 44のデビューライブは各メーカーのサウンドが交錯する中スタートします。しかし、そのようなデッドな環境にもビクともしないのがHAMMOND 44、どんなギターサウンドが向かってきても怯むことなくリードサウンドを響かせます。ハイからローまで隙間無く拾うピックアップマイクが鮮明な輪郭を伝えてくれるのです。
 また、HAMMOND 44のために新設計されたリードはPRO-37v2よりも滑らかなリードカーブを特徴とするシェービング。PRO-37v2が根本から深くシェープされているのに対してHAMMOND 44は緩やかにシェープされている。その分、シェープ面が長くなっていて先端も肉厚なのです。ミクロの世界の改良によりPRO-37v2には無い金属的な鳴りを抑制した骨太のリードサウンドが得られているのです。このサウンドこそが夏秋さんの説得力豊かなバラードを支えているのです。


 ぶつけ本番のセッションとなった那須野綾さんですが、彼女のリズムは縦が性格で裏拍のビートが小気味よく決まるのでグルーブは抜群。余分な手数を挟むことなくロックのスピリッツが伝わってくる。エキセントリックなUooMooとは一味違った味わいが漂うのだが、達人にはそのような感傷は微塵も無い。「水は方円に従う。」とでも言うのであろうか、一切ブレの無い音楽観がすべてを支配している。
 製品PR の域を超えた演奏には通りがかりのお客様も反応せずにはいられません。いつの間にかイベントスペースは人だかりとなり多くの人が達人の演奏に耳を傾けます。すべてオリジナルというプログラムでしたが、楽器フェスティバル2008に集まった玄人肌のお客様たちには達人の音楽観に共鳴いただけたようです。


 循環呼吸と両手弾きという妙技を駆使する達人の演奏にはいつもながら惚れ惚れさせられます。しかし、HAMMOND 44はリード楽器の新たなる価値観を求めて誕生してまいりました。それは、演奏者の音楽観を自由に伝えるためにあり、様々な可能性を秘めています。この楽器を手にされた方が奏でる響きに感動をいただけることを楽しみにしたく思います。HAMMOND 44、末永くご愛用ください。