date 11月22日(土)/ place ピア・ジュリアン
musicians 向井航(CELLO) 石坂慶彦(PIANO/HAMMOND 44) 今回紹介するのは作曲家でピアニストの石坂慶彦さん。東京藝術大学音楽部作曲科をご卒業という由緒正しい経歴を持たれ、ロン毛で茶髪でヘビーメタルという風貌で異彩を放つアーティストです。彼との最初の出会いは昨年の暮れ、「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏する某オーケストラでのことだった。楽器フェスティバルに出展したプロトタイプの「STAGE-44」をモニターさせて欲しい。という単刀直入のオファーからだった。初対面のときこそ彼のいでたちには面食らったが、芯の通った人柄とメロディオンに対する思い入れにすっかり魅せられてしまったのだ。
彼のこだわりは楽器にも現れていた。初めて見せられたPRO-37v2は共鳴箱にピックアップを貼ったエレアコタイプのもの。オマケにグースネックのマウスピースにストラップ使用であった。HAMMOND 44のコンセプトそのものだったのである。目を見張ったのはサイドカバーが豹柄だったこと。細部にまで細工が施されている。今回、製品と並べてみると改めて感心させられた。 「ゴムの振動で音を拾っていたのですね。自分のは中域あたりにピックアップを張っていたんスけど。」 と、構造のチェックも終わっていて、エフェクターについても程よいチューニングを詰めているようであった。中でも、マイクの特性を補うためにブーストをかけているところと、チューブアンプでサウンドを整えている点については恐れ入ったものである。
石坂さんのこだわりはこれだけでは終わらない。PRO-37v2に取り付けたラインジャックもストラトのパーツを使用されている。「ここは鉄板をバリバリ切って穴を開けましたよ。」と、裏面を見せられる。手の込んだ仕上げは、とても作曲家の領域ではない。S-32にいたってはモスグリーンにペイントが施されている。塗装の技も素人ではない。「これはちょっと軽い音がすると思うんだけど、音の抜けが気に入っているんです。」と、鋭く息を吹き込んでリードを鳴らす。甲高い金属音が突き抜ける。 「トイ楽器としてはピアニカだけど、楽器群としてはメロディオンですよ。だから自分はスズキの製品を使用しているんです。だけど、このHAMMONDロゴはズルイっすね。かっこよすぎます。反則ですよ。」と、笑われる。
今回の共演はチェリストの向井航さん、関西フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者である。この二人がどのような音楽を奏でるのかというと、「バラード」である。バイオリンのように高速パッセージを得意とするのでもなく、コントラバスのようにピッキングで動き回ることも少ないチェロという楽器がその魅力を発揮する音楽、「バラードばかりでもよかですか。」が今回のタイトルの『バラよか』である。 とは言え、石坂さんが作曲されたTBS水曜ノンフィクションのテーマ「THE BASE」では見事なランニングベースを演じられた向井さん。松脂のついた弦を爪弾くためマメをつぶしての熱演である。小気味良いホウイングで演じられた「ペーハー ムーン」、しっとりと歌い上げる「オーバー・ザ・レインボー」、どれをとっても豊かな響きで楽器が鳴っている。
HAMMOND 44が登場したのはラストの「リベルタンゴ」でのこと。この1曲のためにエフェクターの調整に余念がなかった石坂さん。オクターバーを加えてバンドネオンのサウンドを作っている。ブレスでの抑揚がとても情熱的に彩を加え、ラテンカラー一色に染め上げていく。最後のコードはダブルタンギングで細やかな泡のようにカデンツァは消えていく。そして、ピアノのフィルイン。疾走感のあるテンポで駆け抜けていく。チェロの主題が休符を喰って飛び込んでくる。 演奏後二人に声をかけると、「せっかく来ていただいたのに見せ場が少なくて申し訳ないです。」と、気遣われる向井さんに対して、「いや、ダラダラやり続けるよりも、バッチリ決めたほうが印象的なんだよ。」と言い切る。完全にプロデューサー目線である。そして、「この楽器が本領を発揮するのはこれからですよ。まだまだ、可能性を秘めている。とにかくロングトーンができることはキーボードとして一番の武器なんですよ。」と、付け加えられた。 |








