ハモンド・スズキの日々是、口風琴 -きままにメロディオン-

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第33回 「プロジェクトN」
 東京スカパラダイスオーケストラ PARADISE BLUE TOUR
2009年6月17日(水)
 HAMMOND 44のニュープロダクツは東京スカパラダイスオーケストラのトランペットプレイヤー、NARGOさんとの出会いから始まった。昨年の夏、発売前のHAMMOND 44をモニターしていただき、ライン出力できるコンセプトが高く評価していただけた。しかし、「この楽器のサウンドはアカデミックすぎて、スカパラみたいな爆音サウンドの中ではきびしいですね。もっとチープなサウンドでもいいのです。しかし、スカパラで使えるサウンドであればどのようなバンドの中でも存在感を誇示できますよ。」と、HAMMOND 44そのもののキャラクターについてはNGであるが、サウンドのキャラクターという新しいテーマを発見したのであった。
 はたしてチープなサウンドとは…、言葉どおり「安っぽい」というだけではないようだ。最初はHAMMOND 44の持つリードカーブを変化させることで対応できると安易に考えていた。PRO-37v2タイプをモチーフに制作した最初のプロトモデルは力強いサウンドとなったが、あまりにも音抜けが良くない。反対にリードを薄くすれば響きは軽くなるがパンチが無くなる。美しく力強いリードの生音が必要なのである。


 たどり着いたのは、バルブカバーを取り外した空気箱とスピーカーの保護カバーに使われているパンチングメタルの本体カバーだった。PRO-37v2もHAMMOND 44も柔らかなサウンドにするためにプラスチックの空気箱と金属の本体カバーでリードの生音を反響させている。NARGOさんの言う「チープなサウンド」とはメロディオンのコンセプトを逆走するものだったのだ。プロトモデルを吹いてみると音抜けは想像以上のものだった。リードの響きがカバーを持つ手に当たり金属音が広がっていく。今までのメロディオンには無かったキャラクターである。
 2月、意気揚々とNARGOさんのもとにプロトモデルを届けると、開口一番「ハイパーな鍵盤ハーモニカですね。」と満足げな言葉がかえってきた。そして、「リードの哀愁も良く出ていますよ。」と付け加えられた。そして、PARADISE BLUE TOUR のリハーサルに突入したのである。


 3月、待ちに待ったPARADISE BLUE TOURがスタート。最初の公演先の渋谷CLUB QUATTROにNARGOさんを訪ね、そこで直面したのは強烈なスカパラサウンドだった。ステージ上では4管のホーンセクションとバンドのサウンドが交錯している。ここではHAMMOND 44はまだまだインパクトが与えられていない。NARGOさんも「生音はとても良いのですが、ラインを通した音が抜けてこないのですよ。そのままの生音が伝えられるといいのですが。」と話される。新たな壁が待っていたのだった。
 幸いにも次の公演先はハモンドの地元である浜松だった。HAMMOND 44のエンジニアたちとNARGOさんの間で緊急ディスカッションが持たれ、ピックアップマイク部のカスタム化に着手することになった。そして、2つめのプロトタイプが完成したのは4月の高松公演からだった。


 改良されたピックアップマイクはハイからローまでの全ての帯域をフラットに拾うワイルドなキャラクターとなった。オリジナルのHAMMOND 44のエレガントさは損なうことになったが、ギターともホーンとも互角以上に戦えるサウンドを持つことになった。これにはPARADISE BLUE TOUR に同道している音響エンジニアも太鼓判を押された。
 そしてルックスもリニューアルしたのである。表面を磨き上げスポットライトを反射する本体カバー、HAMMONDのロゴもくっきりと浮かび上がっている。ブラックマーブルだった両サイドのカバーはスカの象徴でもある市松模様に変えられた。サプライズはNARGOさんたっての希望だった電飾が本体に埋め込まれたのだ。これにはNARGOさんも相好をくずされて大喜び、その夜のライブで一番驚ろかされたのはステージ上のメンバーたちだった。


 5月、PARADISE BLUE TOUR はZepp Tokyoで千秋楽を迎えた。この日もNARGOさんのHAMMOND 44は異彩を放ち、哀愁のあるリードサウンドを奏でていた。HAMMOND 44が演奏されるのはショーの中のわずかな部分であるが、そこにリードサウンドがあることでプログラムは完結している。それゆえにNARGOさんは妥協することのないリクエストをHAMMOND 44にぶつけてくれたのだ。そして私たちもバンドの中でのリードサウンドについて深く考える機会をいただいた。今回のツアーを通してHAMMOND 44を温かく迎えていただいたスカパラのメンバー、スタッフの方々には感謝が絶えない。ご協力いただいた皆様の心にお応えできるよう、新たなリードサウンドを多くの方々に届けたく思います。