7月に紺野紗衣さんから普天間かおりさんのライブ「鍵盤ナイト〜普天間かおりとSix Hands〜」にお誘いをいただいた。このときは3人のピアニストがピアノ、エレピ、ハモンドオルガンとHAMMOND 44、アコーディオンを演奏し、文字通り6本の手で普天間さんと音楽を紡ぐライブであった。透明感のある普天間さんのボーカルとピアニストたちの繊細なタッチのキーボードプレイが絡み合うアコースティック感を満喫したひと時だった。その時、紺野さん、宇戸俊秀さんとともに出演されていたのがピアニストの倉田信雄さんだった。
倉田さんといえば、さだまさしさんのコンサートツアーのバンマスであり、数多くのアーティストのプロデュース、コンサートのサポートをされてこられた音楽界の大御所である。気さくなお人柄の中からも眩いほどのオーラが発せられている。リハーサルで倉田さんがHAMMOND 44を演奏している場面を写真に収めたかったのだが、あまりにもラフなスタイルだったのでシャッターを押すのが憚られたものだった。しかし、本番のステージに上がられた倉田さんはリハーサルとは色違いのラフなスタイルであった。そんな苦悶を知ることもなく、「11月にさださんのコンサートツアーで浜松に行きます。そのときはHAMMOND 44を演奏しますからお越しください。」と、声をかけていただいたのだった。
楽器フェアの開幕した11月5日、新製品の発表とは別に向かった先はアクトシティ浜松、リハーサルを終えた倉田さんは笑顔でステージに招かれた。倉田さんのセットの中心はもちろんグランドピアノである。その上にはトライトンがマスターキーボードとして置かれ、脇にはノードとモチーフが並べられている。オルガンサウンドはノードを使用されており、後ろに置かれたLeslie2101に接続されている。「小さなLeslieだけど、これがあるおかげでオルガンらしい演奏ができています。」と、お褒めの言葉をいただいた後、念願の写真を撮らせていただきました。
HAMMOND 44が演奏されたのは「勧酒〜さけをすすむ〜」の時だった。特別なエフェクトを通しているわけではないが、ラインを通した倉田さんのリードサウンドは格別なものであった。低音から高音までフラットに増幅されるHAMMOND 44は楽曲とほどよく溶け合い、暖かく全体を包み込むリードの響きであった。別の場面でマリンバの宅間久善さんの演奏したPRO-37v2はソロパートを担うきらびやかなリードサウンドで、マイクとの距離感を感じられる演奏だった。鍵盤ハーモニカも場面ごとに特色を持ったプレイができるようになったことを実感させられた。
話し上手なさださんのトークに笑わされ、バンドの奏でるイントロで音楽に誘われ、さださんの詞の世界に引き込まれていく。夢幻のごとく時間が過ぎ終演をむかえた。たった1曲ではあったが、「秋桜」を弾いた指で奏でられたHAMMOND 44の演奏はいつまでも耳に残る晩秋の響きとなった。