ニューヨーク在住のオルガニスト敦賀明子さんが、レスリー3300の開発責任者、鈴木楽器製作所の大野弘光氏に直撃インタビュー。レスリー3300のサウンドの秘密に迫ります。
| 敦賀: | 始めまして、敦賀明子です。先日のツアーでレスリー3300使ってみたんですけど、すごいですねあの迫力。本当、大好きになってしまいました。今日はレスリー3300の秘密についていろいろ伺ってみたいと思います。宜しくお願いします。 早速ですが、なぜ新しいレスリーを開発しようと思われたのですか? |
| 大野: | レスリーサウンドは、音の出口が空間を物理的に移動し、あらゆる反射音が刻々と変化しながら、重なることでのみ得ることが出来ます。これは、アコースティック空間が作り出す、まさにアコースティックサウンドと言えますね。わたしたちが、そのサウンドを次の世代に伝えていく為にすべきことは何だろう? 新レスリーの開発はその為に出した私達の答えだったのです。 プロフェッショナルプレーヤーに、自宅はもちろんのこと、あらゆるステージやギグで使っていただくことで、本物のレスリーサウンドを世に広め、認知度を高め、レスリーサウンドがみなさんの心に留まる、これこそが次世代に伝える道と考えました。いつでも、どこでも、誰でも、どんな楽器とでも使える、ただし、サウンドはいっさいの妥協のない本物であること、こんなレスリーなら私達の希望をかなえてくれると考えたんです。 |
| 敦賀: | ずばり、3300のサウンドの秘密をお聞かせいただけますか? |
| 大野: | はい。たくさんありすぎてどれからお話するか迷ってしまいますね(笑)では、まず、分かりやすいところから説明させていただきます。レスリーと言えば、回転しているラッパ状のホーンと臼のようなローターが目に浮かんできますが、この二つはなんと、レスリーの定番122や147と正真正銘同じ物を使っています。さらにスピーカーユニットですが、高音域を担当するホーンドライバーと呼ばれるスピーカー、これも現在生産しています122や122XBといった定番モデルと同じ部品を採用しています。つまり、音色に関わる重要な部品は122と同じ部品を採用してしまいました! |
| 敦賀: | してしまいました、ですか? |
| 大野: | これだけ本物を使うと、コスト的に本当に厳しいんですよ。しかも、全てUSAからの輸入になりますので。 |
| 敦賀: | それってお買い得をさりげなくアピールされてるんですね(笑) 他には? |
| 大野: | ご覧いただければお分かりだと思いますが、全体が小振りになっています。従来のレスリーではこのサイズであれば、ウーハーは12インチ約30cmのユニットが使用されていましたが、3300では38cmウーハーを新開発して採用しました。これもアメリカのスピーカーメーカーとやり取りを繰り返してスピーカーユニットの開発だけで1年間もかかってしまいました。 |
| 敦賀: | どうして、30cmの今までのスピーカーではだめなんですか? |
| 大野: | ハモンドオルガンの重要なエッセンスに「分厚い低音」というものがあります。その「分厚い低音」を得るには38cmじゃなければどうしてもだめなんです。ただ、今回はキャビネットを可能な限りコンパクトにしたいという目標がありましたので、通常38cmのユニットに必要なスピーカーボックスの容積が確保できませんでした。そこで、ボックスの容積が小さくても狙い通りの低音が出せるスピーカーを開発する必要があったんです。 |
| 敦賀: | なるほど。それとかなり音量を上げても余裕で鳴っている感じがしますが? |
| 大野: | はい、スピーカーをドライブするアンプも、いままでのレスリーの中で最高のホーン80W、ウーハー220Wのハイパワーアンプを搭載しています。これだけ鳴れば、例えばバンドの中でガンガン鳴っているドラムやディストーションの効いたギターに十分対抗できると思っています。ただし、うるさいだけではだめなので、実は、真空管を採用してサウンドに味付けができるようにもしてあるんですよ。 |
| 敦賀: | その他に苦労されたことはどんなところですか? |
| 大野: | 一番苦労したのは、上下のローターのスピードの変化です。スローからファースト、ファーストからスローへのカーブをオールドのレスリーに合わせる作業でした。このために専用のマイコンを採用して、マイコンで回転をコントロールするようにしました。回転については全く違和感のないところまで持ってくるには、本当に試行錯誤の連続でした。 |
| 敦賀: | え!?レスリーにマイコンが使ってあるんですか? |
| 大野: | そうです。マイコンを使ってさまざまなコントロールをしています。これは、2101よりも古いレスリーでは出来なかったことで、レスリーにもデジタル技術が生かされてきています。 |
| 敦賀: | レスリーにデジタル技術ですか、とっても意外です。 |
| 大野: | アナログでなければならない部分はしっかりとアナログで残し、デジタルにすることで、より使いやすくなる部分には積極的にデジタル技術を使っています。例えばローターを回転させる為のモーターは古い時代のモーターは手に入らないので、新しいモーターを使いますが、そのままだとどうしても、立ち上がりや立ち下りのカーブが従来のレスリーと違ってしまいます。これをデジタル技術で従来機と合わせるといった目に見えない苦労をしています。 |
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| 大野: | そうですね。評価の高いギターアンプの多くは真空管を使っていますので、明らかにメリットがあってのことというのは想像できると思います。少し、技術的な話をさせていただきたいのですが? |
| 敦賀: | ついていけるかな?分かりやすくお願いしますね。 |
| 大野: | はい、頑張ります(笑)市場には真空管をつかった歪系エフェクターはたくさんありますが、多くのモデルは音声信号が真空管に入る前にICを使った回路で音を歪ませたり、単純に波形の上下を切りとったりしているだけのタイプが多いのです。でも、この3300は真空管には、クリーンな状態の波形を入れて、真空管の中だけで波形を歪ませる工夫をしています。これが真空管本来の味を出している秘密なんです。 |
| 敦賀: | いわゆる正統派ということですね。でもそれが何故良い事なのですか? |
| 大野: | さすがに関西出身、つっこみが鋭いですね。温かいサウンドやマイルドな歪といったサウンドの秘密は偶数倍音の乗った歪なのです。逆に奇数の倍音の乗った歪はクセのある耳障りな音になります。正しく使われた真空管回路を通った音はこの偶数倍音が付加されるのです。真空管特有の増幅曲線によって増幅されることで、真空管のキャラクターがより、鮮明になってくると言えるんです。 |
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| 敦賀: | 後ろから見ると、今のツマミの上の部分が何だか網目のようになっていますが、今までのレスリーでは見たことがないんですけど? |
| 大野: | はい、それはパンチングメタルと呼ばれる網目状の穴が開いている金属製のカバーです。プロのステージにおいては、殆どがレスリー上部の裏蓋を取り外して、マイクを立てて音を取り、PAに送り込むことをしますが、いちいち裏の蓋を外さないでも音が取れるようにしてあります。 |
| 敦賀: | その為だったんですね。プロの現場にはとってもありがたいんじゃないでしょうか。音響さんに成り代わりまして御礼申し上げます(笑) |
| 大野: | どういたしまして(笑) |
| 敦賀: | ジミースミスの古いレコードを聴くとレスリーを使っていないと思われる、つまり回転感の感じられない録音があるのですが? |
| 大野: | はい、ハモンドオルガンカンパニーが製造していたオルガン用のスピーカーは回転機構が装備されていなかったのです。レスリーではなくそのオルガン用のスピーカーを使った録音や、レスリーでもスローの回転が無く、ストップとファーストだけの機種があり、それらを使った録音が残っています。 |
| 敦賀: | そうだったんですね。レスリーの力を借りないで、B-3のビブラートコーラスだけを使った演奏も説得力がありますよね。 |
| 大野: | 3300は回転を止めることも出来ますよ。現行のハモンドオルガンXKシリーズやNewB-3にはブレーキあるいはストップといったスイッチがありますので、オルガン側でレスリーの回転をコントロールことができます。もちろんレスリー側に回転をストップさせる回路が付いているから出来ることなんです。 |
| 敦賀: | いいことを聞いちゃいました。今度試してみますね。ところで、オールドB-3に接続されているレスリー122はストップさせることは出来ないですよね。 |
| 大野: | そうですね。レスリーの中の配線を外してしまえば、回転を止めることができますが本番中にレスリーの裏にかがみこんで配線を抜いている姿を想像してみてください(笑)、演奏中にはむりですよね。 |
| 敦賀: | 確かに厳しいものがありますね(笑)ところで3300には随分頑丈そうなキャスターがついていますね。 |
| 大野: | キャスターはプロフェッショナルのハードなツアーにも耐えるように厳選しました。キャスターが取り付けられている部分の底板の厚みはなんとトータルで28mmもあるんですよ。キャスター自体も4個で180kgまで耐えられる丈夫なものですから、安心してお使いいただけます。 |
| 敦賀: | 今日は本当に丁寧に教えて下さってありがとうございました。私はニューヨークの自宅にレスリー2101も持っているのですが、3300も欲しくなってしまいました。でも、置き場所が・・・(笑)今後も私たちオルガニストの為、世界中のミュージシャンの為にすばらしい製品を作ってくだれさばとっても嬉しいです。ありがとうございました。 |

はい。たくさんありすぎてどれからお話するか迷ってしまいますね(笑)では、まず、分かりやすいところから説明させていただきます。レスリーと言えば、回転しているラッパ状のホーンと臼のようなローターが目に浮かんできますが、この二つはなんと、レスリーの定番122や147と正真正銘同じ物を使っています。
ご覧いただければお分かりだと思いますが、全体が小振りになっています。従来のレスリーではこのサイズであれば、ウーハーは12インチ約30cmのユニットが使用されていましたが、3300では38cmウーハーを新開発して採用しました。これもアメリカのスピーカーメーカーとやり取りを繰り返してスピーカーユニットの開発だけで1年間もかかってしまいました。
はい、スピーカーをドライブするアンプも、いままでのレスリーの中で最高のホーン80W、ウーハー220Wのハイパワーアンプを搭載しています。これだけ鳴れば、例えばバンドの中でガンガン鳴っているドラムやディストーションの効いたギターに十分対抗できると思っています。ただし、うるさいだけではだめなので、実は、真空管を採用してサウンドに味付けができるようにもしてあるんですよ。
一番苦労したのは、上下のローターのスピードの変化です。スローからファースト、ファーストからスローへのカーブをオールドのレスリーに合わせる作業でした。このために専用のマイコンを採用して、マイコンで回転をコントロールするようにしました。回転については全く違和感のないところまで持ってくるには、本当に試行錯誤の連続でした。

はい、それはパンチングメタルと呼ばれる網目状の穴が開いている金属製のカバーです。プロのステージにおいては、殆どがレスリー上部の裏蓋を取り外して、マイクを立てて音を取り、PAに送り込むことをしますが、いちいち裏の蓋を外さないでも音が取れるようにしてあります。
3300は回転を止めることも出来ますよ。現行のハモンドオルガンXKシリーズやNewB-3にはブレーキあるいはストップといったスイッチがありますので、オルガン側でレスリーの回転をコントロールことができます。もちろんレスリー側に回転をストップさせる回路が付いているから出来ることなんです。
今日は本当に丁寧に教えて下さってありがとうございました。私はニューヨークの自宅にレスリー2101も持っているのですが、3300も欲しくなってしまいました。でも、置き場所が・・・(笑)