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特別企画

吹奏鍵盤笛 アンデスの思い出 澤野喜之  
最初、アンデスを商品として造りたいと考えたのはいつの頃だったろうか。当時の資料を観て、23年前と云われると、私は今年で56歳だから・・・・ そうか、じゃあ32歳の時か、23年前と云うと1984年か・・・と思いつつ、ちょっとセンチになったりしながら当時の思い出を辿ってみた。

当時は鍵盤ハーモニカ「メロディオン」も含めて、新機種及びモデルチェンジで商品開発に追われていた。
と言うよりも、どんな商品でも、音が良く特徴があればまだかなり売れた時代でもあった。

その中で吹奏鍵盤楽器としてハーモニカの様なリードを題材とした「鍵盤ハーモニカ」があるならば、笛を題材とした「鍵盤笛」があっても良いんじゃないかと思ったのがアンデスを商品化する最初の取っ掛かりである。頭を絞って考えたようなアイディアではなく、鍵盤ハーモニカの開発に携わっていれば自然と沸いてくるようなアイディアのひとつであったような感じだった。
でもアイディアの後、それからが大変であった。
経済学を少しかじっただけで、工学関係は全然知識もなくただ好きなだけでこの道に入った私では余分な汗も、涙も出た。


鍵盤で笛の音を出すものと言えば、当然「パイプオルガン」をイメージするが、それをどの様にコンパクト化して人の息でも吹けるような楽器に仕上げるかが課題であった。
構造を詳しく語ってもピンとこないと思われるので、簡単に一言で説明すると、パンフルートに鍵盤を付けた物、って云ったら分かっていただけると思う。
笛は開管と閉管の2種類があるが、閉管を利用した。
これは同じ音程の音を出すのに閉管は開管の約1/2の長さで済む為であるが、音色も開管と違ったものと成るので設計としては非常に迷うところであったが、アンデスの独特の音色はこの閉管の為でもあろうと思われる。

アンデス25で一番苦労したところと云えばやはり笛部であろう。この部分はプラスチックの成形品で金型を要する所だから造り直しが利かないので、来る日も来る日も手加工での試作を繰り返した。
音程、音量、音質、そしてそのいずれにも関係するバランス、この試作の時にはほんとうによく汗と、涙が出た。でも一人で出来るのは試作までで、後は金型を造る時には皆の力を借りないと到底商品化なんて出来っこない。でもどうだろう、こう云う時にはオーラでも出ているんじゃないかと思う位に皆も熱心に取り組んでくれた。そんな皆がいてくれなかったらアンデスも無かったし今の私も無かったと思う。
そんなやさしい熱意ある人達が居て、そしてその人達が今までそっと金型を残して置いてくれたお陰で復刻盤も出来た。そしてこれまでアンデスを広めてくれて、復刻盤の原動力にもなった栗コーダーカルテットの皆さん達にも「感謝、感激!!」

当時は「ついに完成やったーー!!」と思いきや、
「ピッチが不安定でブレスコントロールが難しい」、
「メロディオンが食われてしまう」で、販売中止!
「拾う神あれば捨てる神あり」って云う感じで、ずーっと捨てられていた。

最後に名言を残してくれた林君に感謝を込めて・・・・
アンデスを試作していて思うようにいかず、泣きっ面になっている時に云ってくれた言葉。
「人は嘘をつくけれど、物は嘘つかないよ、頑張ったら頑張った分こちらに跳ね返ってくるよ、物は正直だからね。」 23年経った今でも私は彼の言葉を忘れない。