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特別企画

わたしとアンデス 栗原正己 
自分が昔、アンデスについて書いた文章を発見しました。古いのでちょっと恥ずかしいのですが、まるごと引いてみます。出典は、栗Q本(栗コーダー本)※という本で、その中の楽器紹介ページに載せたものです。


03:アンデス25(鈴木楽器)

涙なしに語れないこの楽器、きいてください。
……………………とある舞台、バイオリンの中西俊博さんがオケピットで、リコーダーめいた音を和音で出している。客席からだと暗くて楽器は見えない。サンプリングにしては魅力的に不安定である。何か? 
終わって楽屋できいてみた。鍵盤リコーダーというか「アンデス」という楽器で、もう売ってないらしい。ステージにあるから行ってみれば……。で、行ってみたらなるほどこれがアンデスか和音がでるなすごいなピッチはけっこう難しいなフムフム、などと思って吹いていたら、突然うしろから「誰だ。おまえ何やってんだ!」と声が。舞台のスタッフさんらしい。客がいたずらしてると思われたか。あわわわわ。いかん! じ、自分はこういうもので、さっき本人に話を……と言ったら、「吹いてもいいと言ったのか!」といわれて言い返せず(たしかにそうだ)ひたすらあやまった。あとで中西さんがとりなしてくれたのだが、オレはシュンとしちまったよ。うかつだった。こういうの子供のころにはよくあった気もするんだけど、30すぎてまさかなァ……。性格というか、持って生まれたものはそう簡単には変わらないものなのだなあ。おれはもう二度とアンデスを吹くことはあるまい……………………。

と思っていたところに朗報です。ジャン! 何年か前、クラビオーラ(※※)を持ってロバの音楽座に行ったら、それがきっかけでアンデスの話題になり、「たしか倉庫にあったよね。うちは使わないから」と、座長の松本さんにゆずってもらっちゃったんだもんね。よし、また吹いてみようっと。ピッピー! ああたのしいなあ、あげないよ。

「KURICORDER QUARTET ・・・・・::」(通称:栗Q(コーダー!)本) P68、69(第4章 楽器命)より


と、こんな感じなんですが、うーん、「あげないよ」とは大人げない。
そしてこれがいつ頃かと言いますと、これも同じ本の中の年表(P141〜)に出ています。抜き書きしますと、


1995 8/5 栗原、音楽劇「銀河鉄道の夜」を観に行き、中西俊博氏の演奏していた「アンデス」という楽器を知る
1997 7/9 栗原、大阪でアンデスと思いきやクラビオーラを発見
1998 4月 栗原、ロバの音楽座よりアンデスを譲り受ける



フム、この本は今ごろになって役に立つなあ……。つまり出会いが12年前、入手が9年前ということになります。ちなみに原稿は今から7〜8年前ですね。ハハン、思い出して来ました。

中西さんによりアンデスを知り、欲しくて仕方なくて、でも当時は今のようにネット環境が整っておらず、のんびり探す、というか、ちょっとだけ気をつけて日々を過ごす、という程度だったんです。

そんなある時、大阪の楽器屋さんで、似たような楽器を発見! 「あ、アンデス!?」と思って、でもなんか大きいし、よく見たら違っていて、それがクラビオーラでした。がっかりしつつも、また違った魅力的な音、フォルムだったので購入、そしてそれを使っていたことがきっかけで、ついにアンデスを手に入れることが出来たわけです。
その間、約3年。これが長いのか短いのか、不思議な縁なのか必然だったのか、こんなこともあるのだなあ、と思いつつ、とにかく嬉しくて仕方ありませんでした。

その後、自分の音楽活動で、もちろん栗コーダーカルテットでも、音色資源の重要なワンアイテムとして、たびたび楽曲に使用してきました。面白いことに、音域が同じでも、リコーダーでなく、アンデスでないとしっくり来ない、という曲があるんです。おそらく僕たちのレパートリーの中でもっとも知られているであろうカヴァー曲「帝国のマーチ」も、まさにそんな曲です(この曲は和音のパートもあり、アレンジ担当の関島は最初からアンデスを想定していました)。この演奏でアンデスの存在を知った方も多いのではないかと思います。

そして今年、このアンデス25を通じて、鈴木楽器のスタッフの方や、ひいては当時の開発担当の方とお話する機会までいただき、メンバー一同かなりの興奮! そして今回の復刻……。
なんということでしょう。こんなことって、当時の自分からするとまったく想像もつかない夢のような話であり、現実は不思議で、世の中はなかなかのもの、と、しみじみ嬉しさをかみしめている昨今です。

それにしましても、楽器にせよ人にせよ、出会いというのはなんて面白いものなんでしょう。そしてその媒介になっているのが自分のやっている「音楽」、だとすると、これはもう音楽家ミョウリに尽きます。


栗原正己 2007年8月


栗Q本(『栗コーダー本』と発音):2001年刊行。バンドの5.1周年分の歴史が分かる160ページの書籍。当初ツアーパンフレットとして制作が始まるも、内容が膨らみ過ぎ別のかたちで販売。現在廃刊。誰も呼ばない正式名称が「KURICORDER QUARTET ・・・・・::」
※※ クラビオーラ(クラヴィオーラ):CLAVIOLA。ドイツ、HOHNER社製の吹奏鍵盤楽器。各鍵盤にシングルリードのパイプがあてがわれており、クラリネットのような音色を発する。アンデスよりはひとまわり大きい。


追記:小川文明さんが、ぼくと殆ど同じアンデス体験をされていてびっくり!(ブログにて発見。中西俊博さん経由ということに加えて、場所まで! もっとも自分は円形劇場でなく、背中合わせの青山劇場でしたが) 
中西さんもきっと、いろんな人に何百回と「あの楽器ナンデス?」って聞かれ続けてきたのでしょう。かなりのキーパーソンではないでしょうか。そうそう、この場を借りて、中西俊博さんと松本雅隆さんにあらためてお礼を。ありがとうございました!