日本においては、レスリー122(以降L122)はハモンドB-3専用で、B-3以外のオルガンにはレスリー147(以降L147)というイメージを持つ人が多いようです。
このイメージはあながち間違いというわけではありませんが、L122とL147、この2つの銘機について、当時の取扱説明書、技術資料を基に少し説明してみましょう。
まず、L122とL147のシリーズの取扱説明書を御覧ください。
これは、L122用が1975年3月、L147用が1970年3月に、当時のメーカーであるエレクトロ・ミュージック社が製作したもので、もちろんレスリー1台に1部ずつ付属していたものです。
説明書の中には、メンテナンス方法や部品リスト、モーターやローターの分解図面、回路図までも含まれています。
このような情報が一般の購入者にとって有益だったとは思えませんが、「常に最良の状態で使って欲しい」というメーカーのこだわりや姿勢を感じ取ることができる貴重な資料です。
レスリーは長い間、同一モデルを作り続けていますので、取扱説明書も同じモデルで何度も更新されています。
この2モデルのある時期の取扱説明書を見てみると、冒頭の挨拶文にはっきりとエレクトロ・ミュージック社の考えが記されています。
L147の取扱説明書には、「このレスリースピーカーは、ガルブランセン、ハモンド、ローリー、ウーリツァ といったオルガンに接続して使うために造られました」と記載されています。
L122の取扱説明書には、「モデル122や122Rといったレスリースピーカーは、ハモンドオルガン専用に造られました」と記載されています。
さらに、L147には、ガルブランセンやローリーといったメーカーのオルガンの具体的な機種名をあげて接続方法、使い方が詳細に記載されています。
L122には、ハモンドのA,B,C,L,Mといったトーンホイールオルガンとの接続方法が詳細に書かれています。
当時、ハモンドとは別会社であったエレクトロ・ミュージック社が、オルガンメーカーとしてハモンドを特別な存在として考えていたことがうかがえます。
では、なぜ日本ではレスリー147がたくさん使われ、レスリースピーカーの代名詞のようになったのでしょうか。
大きな理由はコンボプリアンプの存在です。エレクトロ・ミュージック社は、あらゆるオルガンと簡単に接続できるようにする為に、L147用のコンボプリアンプ7875を発売しました。
これは、今でも多くのプロミュージシャンが愛用している優れもので、インプットは一般的な6.3φの標準ジャックで、スロー/ファーストを切り替えるためのフットスイッチがついています。
つまり、この7875というコンボプリアンプは、レスリー用端子を持たないオルガンでも、ギターでもエレクトリックピアノでも簡単にレスリーから音を出すことができるということで、レスリーを使うハードルを下げた功労者ということが出来ます。
これに対し、L122を使うためには、コネクターキットと呼ばれる改造キットを専門のエンジニアがオルガンの内部に取り付ける必要があったので、L122はそれを使うユーザーが限られてしまったようです。
では、技術的な違いはどこにあるのでしょう。
キャビネットの寸法や構造の違いは両者にはありませんし、レスリーの重要部品である、スピーカーユニットやローターホーン、モーター、アンプの出力等にも違いがありません。
違う箇所は主に
1.オルガンとの接続端子
2.真空管アンプの回路
3.スロー/ファーストを切り替える回路
です。 それぞれの詳細は次回号でお知らせしたいと思います。