真空管アンプというと皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか?
ほんのり橙色に光るその外観から、暖かい音とか、古い時代の技術という印象から
なんとなく帯域の狭い音というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実際に、トランジスタやICのアンプでは出せない味わいが真空管アンプにあることは、間違いの無いことなのです。
ジャズ喫茶(今でもそう呼ぶのでしょうか?)の定番と言えば、JBLのスピーカー、アキュヒューズやマッキントッシュのアンプ、マイクロやデンオンのターンテーブル等の銘機が思い出されますが、多くのお店が真空管のアンプにこだわっていたようです。
オーディオアンプの名門、マッキントッシュのアンプには、レスリーに使っている真空管6550(あるいは同じ規格のヨーロッパ(英国)管のKT88)を使ったモデルがいくつか発売されています。最近のMC2102という定価\945,000もするモデルでは、使用真空管がKT88/6550という表示になっています。
マニアの間では、KT88はヨーロッパ管なので繊細な音がするとか、6550はUSA管なので、力強い音がするなどと言いながら、真空管を差し替えて楽しまれているようです。そんな超高級オーディオ機器に搭載されている6550という真空管が使われているレスリーのアンプは、単なる増幅器としてではなく、それ自体が楽器の一部として、あの独特のサウンドを作り上げているのです。
それでは、それぞれのレスリーの真空管アンプの写真をご覧下さい。
レスリー122用アンプ
レスリー147用アンプ
見た目で大きく違うところが全体の色以外に、2箇所あるのがお分かりでしょうか?
そうです! まず、一番目は真空管の数が違いますよね。
L122では5本、L147では4本の真空管が使われています。
下表はL122とL147に使われている真空管のリストです。
真空管 | L122 | L147 |
整流管 | OC3 | OC3 |
パワー管 | 6550 | 6550 |
パワー管 | 6550 | 6550 |
初段管 | 12AU7A | 12AU7A |
リレー駆動管 | 12AU7A | 無 |
L122には、リレー駆動用に12AU7Aという真空管が1本多く使われています。
このリレーという部品はローターの回転のスローとファーストを切り替える部品で、L122はこのリレーを駆動するために真空管を使っているのです。
OC3
12AU7A
6550
それでは、二番目は? そう、L147にはL122に無いツマミが一つありますね。
それは、L147のアンプの入力インピーダンスを3段階に切り替えるスイッチです。
レスリー147の入力インピーダンス切り替えスイッチ
LL147の開発目的に、あらゆるオルガンメーカーのオルガンに接続するということがありました。オルガンの機種によって、アンプが8オームのスピーカーを接続するように設計されていたり、16オームに対応して設計されていたり、また、プリアンプの出力しかない機種があったりしたので、このような切り替えスイッチを装備したのです。
連載(1)にあるコンボプリアンプ、これはその名の通りプリアンプですので、8オームや16オームといった重たい負荷をドライブすることができません。
コンボプリアンプを使用するときには、このセレクタースイッチは‘OPEN'の位置にしておかないと、音が歪んでしまって使い物になりません。
両方のレスリーのパワーアンプとしての回路上の違いは2点です。
このあたりのパワーアンプとしての回路の違いが、両者の音色の違いとなっています。
L122もL147も、ローターの回転スピードが切り替わるときには、ACモーターの電源をリレーという部品で切り替える、という同じ方式を採用しています。
L122とL147はモーターも全く同じものを使っています。
ロワードラムローター用モーター
アッパーホーンローター用モーター
交流の100V~117V(一般家庭のコンセントと同じ電圧)をバチバチ切り替えるわけですから、ノイズが発生して当然です。古くなったL147がスロー/ファーストの切り替えのたびにバチバチ音を出すのはよくあることで、USAのハモンド専門店では、このノイズを防ぐために半導体を使った切り替え回路のキットを販売したりしています。
L122はリレーの動きは真空管を使って制御しています。
L147では、音声信号とは別に、スロー/ファースト切り替え信号がオルガン側から送られますが、L122は音声信号にスロー/ファースト切り替え信号が同居して送られます。
L122の音声信号はバランス接続ですので、このような荒業が可能なのです。
レスリー122と147の違いについてはこれまでとさせていただきます。
次回はご質問の多い、「トーンホイールの生産を終息させた理由」について予定しています。